大規模地震が発生した際、建物の倒壊によって緊急車両の通行や避難、物資輸送などを担う重要な道路が塞がれることを防がなければなりません。
川崎市では、防災上重要な道路を指定し、その沿道にある一定の要件を満たす旧耐震基準の建築物について、耐震診断を義務付けています。現在も「耐震診断義務化沿道建築物」として耐震化を進めています。川崎市公式サイト
私は2024年6月21日の川崎市議会第2回定例会で、こうした建築物の中でも、容積率の制限などが建替えの障壁となっている老朽マンションに着目し、建替えと耐震化を促進するための制度について質問しました。
建替えようとしても、同じ規模で建てられない可能性
古いマンションの中には、建築された当時は法令に適合していたものの、その後の法令改正や都市計画の変更によって、現在の建蔽率や容積率などの基準に適合しなくなった「既存不適格建築物」があります。
川崎市では、1973年12月に用途地域等の都市計画決定が行われ、それ以前には現在のような容積率の制限がありませんでした。
そこで私は、耐震診断が義務付けられている沿道建築物のうち、容積率に関して既存不適格となっている分譲マンションがどの程度あるのか確認しました。
市からは、2023年度末時点で対象となる沿道建築物172棟のうち、具体的な既存不適格の件数までは把握していないものの、
1973年12月以前に建築確認を受けた分譲マンションが21棟ある
との答弁がありました。
耐震性が不十分な建築物は当時121棟
さらに市からは、2023年度末時点で、
診断結果が未報告:17棟
耐震性が不十分:121棟
との状況も示されました。
市では、耐震改修への助成だけでなく、2021年度から除却への助成や、建替え等について相談できる建築士の派遣なども行っていました。
しかし、耐震性が不十分な建築物が多数残されていることから、市自身も「さらなる取組が必要」との認識を示しました。
なぜ「容積率」が建替えの問題になるのか
マンションの建替えでは、多額の費用が必要になります。
その際、従来より住戸数を増やし、増加した住戸を販売して得られる収入を建替え費用に充てることができれば、区分所有者一人ひとりの負担を軽減できる可能性があります。
しかし、既に現在の容積率の上限近くまで建物が建っていたり、現在の基準を超えている既存不適格マンションだったりすると、建替え後に床面積や住戸数を増やすことが難しくなります。
場合によっては、現在より小さな建物にしなければならない可能性もあります。
これでは、高齢化した区分所有者などに大きな自己負担を求めることになり、建替えの合意形成をさらに難しくする要因になります。
そこで私は、耐震化を進めるためには、補助金だけではなく、建替えそのものが成立しやすくなる制度を考える必要があると指摘しました。
「容積率の割増し」を耐震化促進に活用できないか
その一つとして取り上げたのが、建築基準法に基づく総合設計制度です。
総合設計制度では、一定の条件を満たして公開空地などを確保することにより、容積率等について特例を受けられる場合があります。
川崎市も独自の許可基準を定めて運用しています。現在の市の基準でも、総合設計制度は市街地環境の整備改善や良好な建築物への誘導などを目的とした制度として位置付けられています。川崎市公式サイト
私は議会で、
緊急交通路等の沿道にある建築物の耐震化を促進するという防災上の公益性を、川崎市独自の容積率割増しの対象として評価できないか
と提案しました。
これに対して市は、緊急交通路等の沿道における容積率割増しについて、
「国の動向なども注視しながら、より効果的な制度となるよう検討してまいりたい」
との答弁をしました。
補助金だけではなく「建替えやすくする仕組み」を
耐震化を進めるには、もちろん耐震改修費への助成も重要です。
一方、分譲マンションの場合は、多くの区分所有者による合意形成が必要となり、居住者の高齢化や経済的負担など、さまざまな課題があります。
そこで重要になるのが、
「耐震化してください」と求めるだけではなく、区分所有者が建替えを選択できる環境をどうつくるか
という視点です。
容積率の特例などを活用して建替え後の床面積を確保できれば、増加した住戸の売却などによって、区分所有者の負担を軽減できる可能性があります。
私は、こうした経済面も含めて建替えが成立しやすくなる仕組みを検討することが、老朽マンションの耐震化促進につながると考え、制度の検討を求めました。
その後、川崎市は耐震化支援を拡充
その後、川崎市は2026年3月に「川崎市耐震改修促進計画」を改定しました。川崎市公式サイト
2026年4月からは、耐震診断義務化沿道建築物についても耐震改修等に係る補助額を拡充しています。川崎市公式サイト
一方、今回提案した**「緊急交通路等の沿道であることを評価した独自の容積率割増し」について、実現したことまでは今回確認した市の資料からは確認できません。**
したがって、この点については今後も制度改正の動向を確認していく必要があります。
災害時の「道路」を守るために、沿道の建物を強くする
耐震診断義務化沿道建築物は、建物の所有者だけの問題ではありません。
建物が倒壊すれば、道路を塞ぎ、救急・消防活動や避難、緊急物資の輸送などに影響する可能性があるためです。川崎市も、この考え方に基づいて対象道路を指定しています。川崎市公式サイト
耐震改修への助成とともに、老朽マンションについては建替えを実現しやすくする制度も重要です。
今後も、**「補助する」だけでなく「建替えられる環境をつくる」**という視点から、沿道建築物の耐震化について取り組んでいきます。